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■活動報告

2006年03月08日

足るを知る ~東京オリンピック招致に関する意見書~

本日の本会議で2016年オリンピック東京招致の決議が行われました。

東京都は、オリンピック東京招致に向け昨年より準備を進めています。しかし、その「計画」についても「金額」についても、未だ概略さえ示されておりません。(過去の事例などから2兆円くらいは必要ではないか?とも言われております)
「オリンピックに向けこれから10年間集中的に道路整備をする」「都債の発行(借金)も考えている」とオリンピックを「口実」にした公共事業についての発言も議会内外で行われ始めました。
石原都知事の「オリンピックに反対する人はそんなにいないと思いますよ」と言うスタンスの中、都民、国民的議論がほとんどなされずに既成事実が積み上げられております。
来週から予算委員会での質疑が始まります。本来であれば、予算委員会でしっかり議論をするか、または、特別委員会などを作って、都民に情報を明らかにして、ともに議論を深めるなどした上で、招致の決議を行うべきです。

以上の理由から、私は決議の採決を棄権させていただきました。

また、これまで事務所の若手スタッフと議論をしてきた内容を「意見書」として取りまとめた、下の「足るを知る」を石原都知事に直接手渡ししました。知事からは「政治家として損にならないように」と「こわ~い」お言葉を頂戴いたしました。

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足るを知る

はじめに
1964年東京オリンピック。
聖火台に赤々と燃え上がる炎を見つめながら、多くの日本国民は自分たちが敗戦から力強く立ち直ったのだという強い誇り、そして未来へのさらなる発展の願いをかみしめていたことでしょう。あれから40数年。アジア初となったオリンピック開催を全会一致で送り出したこの都議会で、再びオリンピック招致問題が取り上げられています。
この間に日本も、そして世界もさまざまな歴史を経て大きく変化してきました。

「オリンピックのおかげさま」
 私達がオリンピックと言う言葉に「大いなる夢」と「未来への希望」を感じるのは、ひたむきに努力し私たちに感動を与えてくれる選手たちの活躍はもちろん、64年の美しい記憶があるからなのかもしれません。
64年当時、未だ経済的発展途上にあった日本は、今や世界第二位の経済力を有する成熟した先進国になりました。これは、オリンピックにより高速道路や新幹線などのインフラが整備され、それが起爆剤となり高度経済成長の後押ししたことに負うところも大きいはずです。私たちは、「東京オリンピックのおかげさま」で自信と勇気を取り戻し、その後の発展への道を切り開いたと言っても過言ではないでしょう。

 まさに、あの時日本は《オリンピックを必要とする国》だったのかもしれません。
 その意味では、64年東京オリンピックの開催は評価されるべき政治的判断だったといえるでしょうし、その実現に力を尽くしてくれた諸先輩、協力してくれた諸外国に感謝をするものです。

2016年オリンピック招致の意味は?
それでは現在、2016年を目標に再びオリンピックを東京に招致するということは、一体どんな意義を有するのでしょうか。
 石原知事がおっしゃるように「東京をなめたらあかんぜよ」という勢いで「こんなにスゴクなった都市『東京』」をオリンピックを通して世界に「誇示」していくことなのでしょうか?

 石原知事は言いました。
「今なすべきことは、他国の狡猾な収奪と隷属の強要によって国益が損なわれていようとしている現実から目をそらさず、国家、民族として真に向かうべき方向を見定めて、「自ら立つ国」としての自己を取り戻していくことであります。そうした意味からも、2016年の開催を目指す東京オリンピックは、日本の底力と成熟都市・東京の存在を世界に対して、はっきりと示す大きな縁としなければなりません」(第一回定例会施政方針演説)と。

 わが国の外交の力量不足を棚に上げて、いたずらに諸外国に対する脅威を煽ることから始まるオリンピックが「平和の祭典」になりえるのかどうか、大変心配です。また、招致にあたり諸外国の賛同を得られるとは思えません。

あるいは、オリンピック開催をきっかけとして東京の再開発を64年のように大規模にすすめていく事に意義があるのでしょうか?(都庁幹部職員からは「オリンピックは『口実』で、本当の目的は、国からお金を引きずり出して都市インフラ整備をすること」という声が、しばしば聞こえてきます。)

実際、本年第一回定例会の知事発言では、
○ 他の追随を許さない都市機能の集中
○ 縦横に整備された正確無比の公共交通
○ 世界一安全で清潔な都市空間
 「などの、どの都市にも真似のできない魅力を備えている」と胸を張りながら、後段では、オリンピック開催をにらみ、道路、空港、臨海開発、河川などの水辺の再開発に全力で取り組む、と大規模公共事業の必要性をいっています。
また、そのために基金を積み(18年度は1000億円)、都債を発行して「借金」をする考えも明らかにしています。(「国から引きずり出す分も含めて2兆円くらいはかかるのでは」との声もあります。)
 私たちは、都市開発の必要性を否定するものではありません。必要な事業は、「オリンピックがあろうがなかろうが」優先順位をつけてやらなくてはいけないと思います。

 しかし、オリンピックを「口実」に「国からお金を引きずり出す」という考えは、中央への依存心が抜けきらない「相変わらずのお役所の発想」であり、「地方の自立」とは大きくかけ離れていると思います。

 また、限られた「パイ」をオリンピックを口実として東京に集中させるということは、本来必要と思われる地方都市の発展の阻害にもなりかねません。
 私たちは、先人たちの努力の「おかげさま」で、便利で豊かな社会に生かされています。確かに、人間ですから「もっと便利に」「もっと豊かに」と「もっともっと!」という欲望に駆られることもあるかも知れません。しかし、明日食べるものにも困ることのない今だからこそ、10分も歩けばバスや電車にアクセスできる東京だからこそ、「足るを知り」欲を抑えることも大切ではないでしょうか。

また、東京は東京だけで生きているわけではありません。東京で暮らす少なくない人たちは地方で生まれ、地方で育ちました。まさに、地方に育まれて東京の発展に貢献している方々がたくさんいるのです。同じことは、食べるもの、着るものにも当てはまると思います。

 2016年のオリンピックには、東京に先だち国内他都市が招致準備を進めています。そのように他都市が歩む前方に、後だしじゃんけんで立ちふさがり「東京のほうがすごいんだぞ!」とオタケビを上げることが、私たちが誇るべき「江戸しぐさ」でしょうか?
(「江戸しぐさ」…東京にある「他者を思いやる」伝統。混雑した通りで肩を引いてすれ違うさりげない所作の美しさと、他人を思いやる心を言う。東京オリンピック基本構想懇談会や石原知事が今回の招致に当たって「東京の文化の力」として強調している言葉)

 さらに言わせていただけば、日本は日本だけで生きているわけではありません。先ほども述べましたが、東京そして日本の現在の豊かさは「64年オリンピックのおかげさま」によるところも大きいと思います。あの時の日本が「オリンピックを必要とする国」だったとすれば、今度は「オリンピックを必要とする他の国」でのオリンピック招致・開催に日本が国を挙げて協力することはできないでしょうか?

世界には今現在でも貧困や飢餓、紛争に悩まされている国がたくさんあります。また、「もう一歩で先進国の仲間入りができる」という国もあります。東京で開催すれば、何兆円とかかるその何分の一の金額が途上国では何倍ものパフォーマンスを生み出します。まさに世界各国の協力で「これからの国」でオリンピックを開催し、貧困や飢餓、紛争をなくし、平和で豊かな国が生まれることこそ「平和の祭典」にふさわしいのではないでしょうか。
私たちは、「わが国で」「わが都市で」と「俺が俺が」と我を張って招致をするオリンピックから「真の平和を目指し、国際協調でオリンピックを開催する」新しいオリンピックのかたちを提案したいと思います

皆がお祭りを開こうとして楽しげに計画を立てているなか、それに棹差すようなことは、「野暮で無粋な行い」とのお叱りもあるかもしれません。
しかし、オリンピック本来の平和的意義や、日本・東京のおかれている財政的状況、また、東京一極集中の弊害を直し、日本の活力を取り戻すために地方拠点都市づくりと地方分権が進む中、「なぜまた東京なのか?」さらに言えば「なぜ今日本なのか?」という大きな疑問符を持たざるを得ません。

知事は言いました。
「消費におぼれてモノに囲まれた生活と引き換えに、私たちは大きな価値的な混乱の渦に巻き込まれ、時代、立場を超えて持ち続けるべき鉛直な価値の機軸、言い換えれば、日本人としての「志」をどこかに置き去りにしてきたのであります。」(第一回定例会施政方針演説)と。

 私たちは思います。今こそ、欲を抑えて「足るを知り」、利己心よりも「利他の心」を重んじる事こそ、日本人の「鉛直な価値の機軸」にするべきではないでしょうか。

札幌市は、オリンピック招致に向けて準備を進めていましたが、市民の合意を得ることが出来ず、撤退の表明をしました。
撤退のきっかけとなったのは住民アンケートです。オリンピックの計画概要、1兆8000億円ほどの予算概要を示して住民の意見を聞きました。結果は賛成33%、反対35%と反対が上回ったためです。

東京都は、オリンピックの概要も予算も示しておりません。石原知事は「オリンピックに反対する人はそういないと思いますよ」と述べています。「俺の言うことに反対する奴はおかしな奴だ」と言わんばかりに感じました。
「日本や東京のおかれている現状」を考えるなら、都民の利益を冷静に誠実にあくまで理性的に追求していこうとする政治の現場にあって、お祭りのもつ華やかで明るいイメージと他地域との競争心だけを前面に出して、その実態や真の目的をあいまいにしたままに計画を推進していくことは、住民をないがしろにした振る舞いとの批判もあると思います。

また、「平和の祭典」のオリンピックの理念ともいえる、スポーツを通しての世界平和への希求、多文化共生社会を目指す国際理解教育などの観点からの説明もほとんど見られません。

さらにいえることは、結果はどうあれ、招致活動だけでも多額の費用がかかるということです。
招致に失敗した大阪では約40億円が使われ消えてなくなりました。長野の招致にかかる不透明な会計については「重要書類はダンボールごと焼却した」などで、未だ明らかにされていません。
知事には、より具体的に明確に、東京でのオリンピック開催が都民や国民にどのような利益と不利益をもたらすかについて理を尽くして説明する義務があります。

これまで述べさせていただいたように、
私たちは2016年東京オリンピック招致に
大いなる疑問を持っています。

東京オリンピック招致に向けての国民、都民的議論の活性化にご協力の程よろしくお願いいたします。

皆様のご意見をお待ちしております。

ご連絡先

TEL 03-3309-8740
FAX 03-3309-8741
E-mail hanamaru870@hotmail.com

2016年
東京オリンピック招致に疑問を呈するプロジェクト

花輪ともふみ(東京都議会議員)
由井啓太郎(東京大学文学部 2年) 平山理恵(早稲田大学第一文学部 2年)
池田昌平(明治大学法学部 1年) 井田智子(早稲田大学政治経済学部 1年)
上條圭太郎(中央大学商学部 2年) 松田淳作(東京大学教養学部 2年)


投稿者 hanawa : 2006年03月08日 15:46

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